久しぶりに会う友人から本をススメられた。
その名も【山怪 山人が語る不思議な話】という本だ。
巷ではすでに有名作で存在は知っていたが読むタイミングが無かったのだが、友人のススメを機会に今が読み時と読み出したのだが作者がインタビューにより集められたエピソードが山のように詰め込まれている。
山のようにと言ってしまうと読み辛い印象かもしれないが各エピソードが1つにマトメられ、それぞれのタイトルから興味の湧いたモノだけを読んでいっても良いと思う。
山怪 山人が語る不思議な話の感想
ハッキリ言って怪談を読むつもりで手にとった人には物足りないかもしれないが、この本は怪談の本では無い。
民俗学的アプローチで書かれているインタビュー集と思ってもらった方がいいと思う。
キャッチも現代版遠野物語という事もあり怖がらせるというより、山で現代に生きる人々の不可思議な体験を集めたもの。
ただし、その不可思議なエピソードが何とも言えず良い。
怪談のようにメチャクチャなオチも無く、ただ淡々と各人が体験した事を教えてくれる。
なんだか読んでいると、祖父や祖母が聞かせてくれた色々な話を聞かされているような気持ちになる。
民話というほど教訓めいたモノでも無いし、怪談というほど怖がらそうともしていない。
もちろん心温まるような話でもないのだが読んでいると少しだけ子供時代に戻れた気がした。
こんな雰囲気の内容だった
全体的に登場するエピソードにはキツネや狸が多い。
これは、日本の山でのエピソードを集めたものだから当然なのだろうが、とにかく山で起こる不可思議な事は狐と狸絡みになる。
余談だが海外でも狐はやはりちょっと怪しい動物的な扱いだ。
中国では妖狐伝説もあるし、ネイティブ・アメリカンでは精霊の化身として扱われている。
しかし狸の話はあまり聞いたことが無い。
日本(特に四国)では狸に関する伝承は多いのはなぜだろう??とふと考えてしまった。
ちなにみ狐も狸もヨーロッパでは毛皮を得る為の動物として扱われ人に何かをするような事は無いようだ。
他によく登場する生き物といえば恨み深いと言われる蛇。
蛇は本能的に多種多様な動物が恐れる生物。(分かりやすいの猫が蛇と間違えキュウリに驚く動画か?)
多くの伝承では蛇は神の使いであり、主に人間への警告的暗示として使われるがこの本に登場する個人レベルの体験談でも蛇の登場する話は警告的暗示の役割があった。
さて、全体的にエピソードを通しいてやはり動物絡みが多いが変わったところでいけば小人も登場したのは驚いた。
もっと心霊チックの話も沢山あるが、どれも怖さというよりはやっぱり不思議体験的なモノがほとんどだ。
あとは、臨死体験の話や神隠しとどこかで聞いたようなエピソードではあるが筆者が丹念にインタビューした様子と訥々と語られる雰囲気はこの本ならではのモノだと思う。
あと筆者が、エピソード真実を追求したり真相解明みたいな事をしないのも良い部分だと思う。
不思議な体験を、そのまま不思議な儘を読者に提供してくれている。
まとめ
この本の面白いのはあくまで山という空間での体験でマトメられている事。
山は信仰の対象にもなるし現代人の私達にしてみれば異界に限りなく近いものだ。
そんな山で暮らし慣れている人々は何を体験しているのだろう?なんて思う人は手に取った方がいい本である。
不思議体験そのものは、実は都会にも溢れている。
不思議体験や怪談めいたエピソードは都会にも沢山あるのだ。
理由は簡単。
人が多いからだ。
人口の分母が違うのだから当然なのだが、そう考えると逆に山(田舎)で暮らす人は圧倒的に少ないにもかかわらず不思議な話が多い。
これも山の産物の一つなのかも知れない。