読み終えた後に気分がちょっと落ち込んでいるのか?考えさせられているのか?よく分からなくなってしまう漫画はいくつかある。
気分が滅入るなら読まない方が良いのだが、ついつい気になってページをめくってしまう。
そして読んだ後に謎の読後感・・
この謎の読後感、強いて他の例をあげるとすれば、ちーちゃんはちょっと足りない も近いものがあったかもしれない。
こういう陰鬱な方に引っ張られてしまう漫画は名作が多いと思う。
今回取り上げる先生の白い嘘もそんな名作漫画の一つだと思う。
先生の白い嘘 あらすじ
原美鈴は24歳の高校教師。生徒を教師の高みから観察する平穏な毎日は、友人・美奈子の婚約者、早藤の登場により揺らぎ始める。二人の間に、いったい何があったのか?――男と女の間に横たわる性の不平等をえぐる問題作
公式サイトhttp://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063883046より引用
やや、あらすじが短すぎるのでネタバレしない程度に補足する。
原美鈴は友人の美奈子の婚約者の早藤からレイプされる。この事は彼女の中の女であるという罪悪感、男女の不平等を感じさせるキッカケになる。
そしてレイプされて依頼、自分を傍観するように成ってしまった教師生活の中で、同じように心に闇を抱えた高校生・新妻祐希に出会う。
彼はバイト先の主婦に無理やり性交渉され過去を持っていた。
お互いに惹かれあう事でお互いの闇を見つめ直すキッカケとなって話は進んでいく。
また、原美鈴をレイプした早藤にも強烈な心の鬱屈があったりと、他のキャラクターも殆どが心に深い闇を抱えている。
その闇を抱えて彼(彼女)等は出口のない日常生活を暮らしている。
そして友人の美奈子は早藤の子を身籠る。
先生の白い嘘・・作品プロフィール
講談社のモーニング・ツーにて連載していた。
このマンガを読め! 2015で第8位
作者は鳥飼 茜という女性漫画家。
前作の地獄のガールフレンドでは女性特有の集団心理の面倒臭さが取り上げられていた。
この先生の白い嘘ではさらに女性という存在の価値を生物的に掘り下げられている。
感想
最初にも書いたがやはり読後感は重い。
物語自体はハッピーエンドに近いのかもしれないが腑に落ちるような落ちないような・・といっても伏線未回収だとか、無理やり終了したとかそんな問題ではない。
きちんとストーリーとして完結している。
今まで色々な女性漫画家が女性という性に取り組んできたが、ここまで辛辣に取り組んだ漫画は少ないと思う。
女性が持っている女性器への認識へと食い込んだような部分。これらは男の私からすれば想像もつかない部分だった。
あと勘違いしないで頂きたいのは、あまり性の問題とここで書いてしまうと勘違いされそうだから言っておくと、この漫画にはジェンダーフリー的に男女平等を掲げるようなところは一切ない。
男、女のらしさという世間が抱え込んでいる概念を浮き彫りにさせてくれる漫画だと思う。
そのらしさの中に隠されている女の生物としての男との力関係が鬱々と淡々と表現されている。
社会的な問題として取り上げられるようなDVの描写などは特にその典型で、この漫画を読むと現場に立ち会った見学者のような気分になってしまう。
この辺りが良い意味で読後感に残ってしまう。
あと、主題と関係ないが女性の集団間のやり取りや雰囲気がよく出ている。やはり女性同士の欠点の見つけ合いをするようなマウンティングしていく関係は女性の漫画家の方が上手いと思った。
また主人公と惹かれ合う関係にある男子高生の新妻祐希は男性からしたら、こんな奴いねーよと突っ込んでしまいそうだが私の高校時代の性欲が強すぎただけなのかも知れない・・
マトメ
少し調べてみると、この漫画家・鳥飼茜は男性読者に人気が出てきているようだ。
理由は女性キャラが魅力的とかそんな部分では決して無いと思う。
男なりに深い女性心理の取っ掛かりのような部分を知ることが出来るからだと思う。
あともちろん女性は皆ハマりやすい内容だと思う。
個人的には内容がちょっと思いので男性は少し考えてから手を読み出した方が良い漫画かもしれない。
先生の白い嘘(1) (モーニングコミックス)