アダムとイブの感想。池上遼一の画力と山本英夫の不思議な原作・・

唐突だが幽霊を信じている人はいるだろうか??

私はあんまり信じていないのだが、おもしろい事に量子力学を研究しだすと理屈の上では起こりうる事象になるだとか・・

すっごい大雑把に説明すると量子力学では、ただただ実験を行った場合と、その実験を観測した場合で実験結果が変わってしまうらしい。

この観測結果に、アインシュタインは不信感を抱き

「神はサイコロをふらない・・」

と言ったとかなんとか・・

さて、そんな量子力学をベースに、稀代のサドマゾ漫画【殺し屋1】を描いた山本英夫がストーリーを担当し、作画を池上遼一が手がけた漫画がある。

アダムとイブのあらすじ

衰退するヤクザ社会を立て直すべく、”スメル”と呼ばれる嗅覚に長けた男が結成した秘密結社――その会合の突如、”透明人間”の襲撃を受ける!1人、また1人と仲間が死にゆくなか、五感を研ぎ澄ましたヤクザ達が徐々に“透明人間”の姿を捉え始め・・・変哲なき密室空間が「透明人間VSヤクザ」という比類無きワンダーランドに変わる!

販売サイトより引用

あらすじの補足・・

なかなか、補足するにも説明がしずらいのだが設定はヤクザもの。

はっきり言って設定有りきで綴りだしたのでは!?といった内容だが、なかなかおもしろい。

最初に述べた量子力学をベースに難解な殺しが描かれる。

感想

そもそも池上遼一の画力が有るおかげで完成度が保たれているのでは!?と最初は思ったのだが個人的に量子力学の事を少しばかり勉強すると原作者の意図も多少は汲み取れてくる。

量子力学を専門家では無く、漫画家が解釈しストーリーとして仕立てるという点は今になって思うと中々おもしろい。

そもそも山本英夫はとにかく普通の日常の裏側に潜む変態達を描く設定が好きな作家だと思う。

のぞき屋、殺し屋1、ホムンクルスと私の中では変態三部作だと思っているが、この漫画はちょっと違う。

物語的には、彼の新しい違和感という名の扉を開けてみたといった所だろうか。

不可解なバイオレンスシーンと共に描かれる、冷めたエロスまじりの描写が非常に面白かった。

少しだけ画像を拝借するが

透明人間の女を愛撫するなんて漫画は今まであっただろうか・・・

逆のエロ漫画で透明人間の男がやりたい放題なんてのは山程有りそうな展開だが。

そして、おもしろいのはこの漫画を池上遼一が描いたという所。

なんと言っても、全盛期の水木しげるのアシスタントをしていたくらいの古株である。

アダムとイブを描いている時はおそらく72歳?(2016年時点)が透明人間への愛撫を描いているのである。

これだけでも有る種のアウトサイダー的なアートパフォーマンスとして成り立つ様な事である。

ま、本人にしてみたら仕事なんだろうけど、読み手の私にはこれだけでも十分の価値が見いだせる事だ。

 

まとめ

感想も書き辛いほど潔いほど難解な作品だった。

しかし、ある意味で非常に面白く、こましゃくれた難解なフランス映画よりは全然面白いものだと思う。

あと狂った発想と、熟練の描写というケミストリーはこんな結果になるという事が分かったので良かった点だと思う。