「尊いのは自分の命だけだ。わたしはわたしの命以外を大事に考えたことはない。」
「もっとも「権利」なんていう発想自体人間特有のものだろうがね。」
「人間はあらゆる種類の生物を殺し食っているが私の『仲間』達が食うのは、ほんの1~2種類だ。質素なものさ。」
これらは寄生獣の登場キャラのミギーが全て言ったセリフ。
寄生生物が、自分たちの生きていく理由を坦々と述べているシーンはどれも読者を少しゾッとさせ、さらにハッと気付かせる何かがあった。
さて、そんな名作、【寄生獣】の作者、岩明均。
現在はヒストリエという漫画を書いている。
ヒストリエは作者がデビュー前から構想を温めていた漫画とあって物語は紀元前4世紀の古代ギリシア世界を舞台にして民族間の問題を抱え、不思議な運命を歩む主人公の壮大なストーリーでおもしろい。
しかし、このヒストリエ、はっきり言って新刊が出るのが遅すぎだ・・
ファンとしては辛い所だが、待つしか手がないのだからしょうがない。
さて、そんなヒストリエの新刊を待っている間に岩明均ファンなら絶対に気に入る1冊をオススメしたい。
1巻読み切りで内容も充実していて同じくヨーロッパの歴史が描かれている漫画である。
コチラも新刊を待つ間に目を通しておくと絶対にいい内容なのでオススメしたい。
岩明均の1冊読み切りの名作、ヘウレーカをネタバレ無しでオススメしたい
時代の設定はヒストリエの舞台からおよそ100年後が舞台。
名将ハンニバルなどが大活躍した時代の漫画。
タイトルの【ヘウレーカ】とはEureka(エウレカ)と同じ意味。
ギリシャ語由来の感嘆詞で意味は「分かった!」など発見、発明の時に発する言葉。
この漫画、重要な登場人物でアルキメデスが登場する。
彼が有名なアルキメデスの原理を発見した時に発した言葉(Eureka!!)として有名だ。
さて、そんなアルキメデスが名付け親?とも言える、この漫画のあらすじを紹介しよう。
ヘウレーカ あらすじ
紀元前3世紀後半、共和政ローマ時代のシチリア島の中心都市シラクサが舞台。スパルタ人のダミッポスは故郷の政治的混乱から逃れシラクサに流れ着く。そこでローマ人だがこの上なくシラクサを愛する女性、クラウディアと出会う。しかし、時はローマ対カルタゴの第二次ポエニ戦争の真っ只中であり、シラクサは非常に重大な選択に迫られていた。シラクサが親ローマ派と親カルタゴ派で分裂する中、カルタゴのハンニバルの下に亡命していた反ローマ最強硬派のエピキュデス将軍が帰還し、クーデターにより親ローマ派の排除に成功、ローマとの長年の同盟を破棄し、カルタゴ陣営に加わった。
市内のローマ人がつぎつぎと連行されていく中、クラウディアとダミッポスは何とかローマ派の重鎮である学者アルキメデスの下で保護を受けることになる。
同盟を破棄されたローマはシラクサに大軍を差し向ける。しかしそこには天才アルキメデスの作った強力な防御兵器があった。
Wikipediaより引用
このあたりの歴史に詳しくない人はちょっと頭を抱えてしまいそうな横文字が並ぶが、漫画の内容は何も難しくない。
読んでいく上で歴史の認知度はまったく必要としないので、私もこのあたりの歴史は疎いが何の違和感も無くスラスラと読めた。(詳しければより楽しいのかもしれないが)
岩明均の独特ではあるが上手いとしか言いようのない人間描写。
そのおかげで序盤にいきなりハンニバルの軍事における天才性も分かるし、後半には老人アルキメデスの物理、数学、天文とあらゆるものを網羅した天才性も伝わってくる。
そして主人公のちょっと冷めたような性格はヒストリエとちょっとカブる。(ヘウレーカの方が先に執筆されているからカブるというのもおかしいが)
登場人物
主人公のダミッポス(スパルタ)とヒロインのクラウディア(クラウディア)はおそらく架空の人物。
モデルの存在等は分からないが、男女の距離感は寄生獣の新一と里美のような距離感のカップルかな。
ほかに出てくる主な登場人物はマルケルスやエピキュデスなど全て実在の人物だ。
歴史漫画と言うにはストーリーが短いが、登場するキャラの殆どは実在し歴史上に名を残した人々ばかり。
ヘウレーカを読むなら
アルキメデスの作り上げた兵器は岩明均の乾いた残酷描写がある。
寄生獣ほどのエグさは無いがもし苦手な人は知っておいたほうがいいかも。
あと歴史を知っている人はより楽しめる内容なのは確かだと思う。
話のスタートはカンネーの戦いでハンニバルがローマ軍を打ち破った所からだ。
もし、この時代に興味が湧いたならアド・アストラ ─スキピオとハンニバル─ という完結済みの漫画が有る。
時代が同じ設定でコチラの方が国の関係など詳しく書いてある。
先にアド・アストラを読んでおくのもいいし、もちろん後から読んでみるのも面白いだろう。
アド・アストラの感想記事はコチラ↓
まとめ
岩明均はしっかりと固定のファンが着いている漫画家といったイメージ。
それは寄生獣はもちろん、それ以外の漫画もしっかりとしたクオリティが有り、何より彼独特の描く世界観に惹きつけられる部分は大きいだろう。
あと寄生獣以降には七夕の国を挟み歴史モノを多く手がけるようになった。
中には日本の歴史(江戸時代初期)を舞台にした雪の峠・剣の舞 もある。
こちらも1冊読み切りで大変に面白い。
そしてこちらもヘウレーカやヒストリエのように主人公はシラッとした感じの若者なのが岩明節を感じさせる一作だ。