血の轍・押見修造・一巻(あまりネタバレしない感想)オススメな漫画

いきなりだが押見修造の漫画はどれも少し病んでる。

しかし、その病み具合がいつも絶妙でストーリーに魅せられてしまう。

私が作者の中で一番好きな漫画は(ぼくはマリのなか)なのだけど、この漫画も一巻からとても惹きつけられた。

今回は押見修造の新作・血の轍の一巻の感想(ネタバレ含む)を記事にしたい。

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押見修造・血の轍一巻感想

血の轍 一巻 表紙

 

母・静子からたっぷりの愛情を注がれ、平穏な日常を送る中学二年生の長部静一。しかし、ある夏の日、その穏やかな家庭は激変する。母・静子によって。狂瀾の奈落へと!

AMAZON引用

いきなり帯に毒親とでかでかと書かれていてストーリーの濃さを感じる。

巻頭から主人公(静一)はまずは子供時代に自身が子供時代に体験した夢を見る。

その夢の内容は道路で静かに眠っている猫に触れた時に、猫の体温は冷たく不思議に思っていたら母(静子)が

「死んじゃってるんさ、このこ」

と教えてくれるという不気味なものだが

このあたりは最後に紹介するサイトで無料で読めるようになっているので実際に読んでみるといいと思う。

 

一巻の内容は?

全体的にストーリーは主人公(静一)の目線を通して伝わってくる。

友人とじゃれあったり田舎の中学生らしい甘酸っぱい恋をしたりと・・

ちなみに恋愛のお相手は活発そうなクラスのマドンナ的な吹石という女の子。

(主人公の恋の相手・吹石)

ちなみにストーリー中ではお互いに気があるといった感じまで関係は進行中。

と、こんな感じでいたってよくある中学生の日常。

そして母(ママ)の息子への依存っぷりを静一は少しづつ違和感と感じ始めている描写が押見節とも言うべき人間性が静かに描かれている。

 

その母と息子の言葉には出さない共通の問題がある。

それは重苦しい親戚付き合いだ。

その親戚とは父親の姉家族の事。

この親戚付き合いの為に主人公は友人との遊ぶ約束なども取りやめて時間を割かなければいけない。

血の轍 親戚の叔母

母の前ではおおっぴらに嫌な態度もとれず、めんどくさそうな従兄弟と遊ばされる。

この従兄弟は典型的な一人っ子といった感じでワガママ、そして主人公に上下関係をしっかりとマウンティングしてくるような存在。

ちなみに名は(しげる)

血の轍 一巻 説明

まさに読んでいるだけでイラっとしてくるキャラクターである。

しかし、この息子は甘んじて粛々とこの親戚付き合いをしている。

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少しどころじゃなくおかしい母の息子への目線

この母の息子へ向ける目線。

明らかにおかしい。

心配性を通り過ぎており過保護というよりやや恋愛のような感情の描写が多々ある。

そして息子もそれを少し照れながら受け流すという感じ。

いわゆる大勢の中学生男子のよくある態度である「オカン!近よんなやっ!!」的な態度は皆無。

言っても「止めてよ!恥ずかしい!」と言うのが精一杯といったところ。

 

そんな息子を可愛がるというのか愛していると言うのか母の息子への表情がとにかく艶っぽい

血の轍 母の目線

完全に女の目である。

そして時には

血の轍 母清子のキス

中学生の息子のホッペにキスだってする・・・。このあたりの毒親感は押見修造の人間描写は非常に巧みだ。

ちなみに誠一に意中の女の子がいるという所まで静子は息子の変化を読み取って気付いている。

話を展開させるキーワード、それは過保護

この過保護というキーワード。

このキーワードが主人公に少し屈辱感のような暗い影を落とす。

従兄弟のしげるは事有る事に過保護とバカにする。まぁ確かに過保護と言われてもしょうがないのだが。

しかし面と向かって「過保護」思春期の男のプライドは傷付くのは当然の言葉かもしれない。

 

一巻クライマックス 母(静子)は静かに殺ってのける

主人公一家とあのうっとおしい親戚一家と祖父・祖母で登山に行く。

ここでも従兄弟と叔母は禁断のキーワードである過保護をジョークとして会話に織り込んでくる。

途中、従兄弟のしげるが、ふざけて静一を高い岩場から押して突き落とすようなマネをする。

それをみた静子は顔を全良くで引きつらせながら静一を抱きしめる。

それを見ていた叔母は過保護だと再び笑いのネタにされてしまう・・

血の轍 過保護を笑う叔母

静一と静子の母子には、場の雰囲気を壊さないように戸惑いながらも愛想良く笑っている時間を強いられる。

ここまで父の事が全然書かれてないが、父はこの自分以外の家族が味わっている空気間は全く分かっていない。

 

登山中に皆で少し開けた空間で休憩を取る。

その時に従兄弟のしげるは誠一を立ち小便へと誘う。

そして、しげるは一人でどんどんと森の中にいってしまう。

仕方なしについていく静一。

そして先ほど、しげるがふざけて突き落とそうとした岩場よりもさらに高い場所、いってしまえば崖に来る

ここで再び、しげるがふざけて落とすようなマネをしてくると考える静一は崖の先端にはいかない。

そんな静一をみて、いらだつしげる。

その時、誠一達を心配して着いてきた静子がやってくる。静子はそんな所に居ては危ないからと、しげるに注意をする。

しげるはそんな静子に

「本当に過保護だいねぇ!」と片足でバランスをとるようにしてふざけてみせる。

そんな、ふざけているしげるは本当にバランスを崩してしまいフラついてしまう。

咄嗟にそれを助ける静子は慌てて、しげるを抱き寄せて助ける。

しかし、助けられてもなお、しげるはそれを鬱陶しいという態度のしげる。

それを見て黙っている静子。

ふたりに微妙な間が訪れる。

そして・・・

血の轍 静子の殺人

この高さ、確実に死ぬ高さである。

つまり静子は殺った。

殺人の後の静子

そしてこのすっきりとした顔。聖母のような顔付きである。

それを見ていた静一は

血の轍 母の殺人を目撃

当然だろう・・。

あとは取り繕うように静子が叫びだし、静一に急いで人を呼ぶように言う。

その間二人はあくまでも静子がしげるを突き落とした事に二人は一切触れない。

そして親戚が到着して静子は取り乱しながら(フリをしながら)、しげるが悪ふざけをしていて崖から落ちてしまったと伝えて大騒動となる所で一巻が終了。

まとめ

やはり押見修造は少し病んでいるストーリーが良い。

ひとつ言っておくと欝展開ではなく、病み展開だ。

この違いは読後感の違いがある。欝展開はまさに鬱々と考えてしまうのだが病み展開は不思議な夢でも見ていた後のような心のモヤモヤが残る。

そう、それは巻頭にあった主人公が夢を見た後のような物だと思う。

という訳でこの漫画の一話目はPIXIVコミックにて無料で読めるので興味のある方は読んでみる事をオススメする。